新年を迎え、謹んで年頭のご挨拶を申し上げます。

  まずは、令和611日に発生した能登半島地震によりお亡くなりになられた方々のご冥福をお祈り致しますとともに、被災された皆様とご家族や関係者の方々にお見舞いを申し上げます。

当協会は、令和元年に合併新設して以来6年目を迎えます。コンクリートパイル・ポールのメーカー及び施工会社の団体として、従来にも増して、製品の品質向上と開発・普及並びに設計・施工技術の向上・普及に、業界の力を結集して取り組んでまいりますので、より一層のご理解、ご協力を賜りますようお願い申し上げます。

さて、日本の経済概況は、昨年7—9月期での実質成長率は前期比年率でマイナス2.%と3四半期ぶりのマイナス成長となりました。これは物価高の影響で個人消費が伸び悩み、企業の設備投資がマイナスだったことが要因です。

先行きについては、景気は穏やかに回復が期待されるものの、中東地域をめぐる情勢、中国経済の先行き懸念など、世界的な原料価格の上昇や金融引き締め等を踏まえ、我が国の景気を下押しするリスクもあり注意が必要とされるところです。

コンクリートパイルの出荷状況をみますと、令和5年度上期(4—9月)の実績は、出荷量が出ていない2社の実績を除き94万4千トンとなり、2社の推計分を加味しても前年度に比べ25%程度の減少見込みになりました。パイル需要を牽引する民間需要が振るわず、官需との割合も6.4ポント減少しました。昨年度主力部門だった半導体などの工場は5割減、流通施設・倉庫は4割減になり全体を押し下げました。官需では住宅が伸びて建築系は好調に推移しました。地区別では工場が主力だった東北や九州をはじめ他の地域でも軒並み落ち込みました。一方でセメントや鋼材などの資材価格高騰の影響、更には本年4月に適用される時間外労働の上限規制を踏まえた大手ゼネコンによる受注の絞り込みの動きも見られるなど、今後とも先行きの不透明感は否めません。下期においては少しでも挽回できるよう期待したいところです。

このような中、当業界における目下の重要課題は、第一に基礎ぐい工事の専門性の確立、第二に働き方改革の推進、第三にコンクリートパイルの信頼性の一層の向上、第四にコンクリートパイル・ポール製品の需要拡大、標準化の推進や品質の向上だと考えております。

当協会は、これらの課題への対応を中心として、本年も以下のような事業活動を着実に進めていくこととしています。

基礎ぐい工事については、現状でも基礎業界は特殊な機械・機材、独自の技術・ノウハウ等を有しているわけですが、専門技術は高度化するとともに体系化が進んでいます。

従来、場所打ちコンクリート杭工法と既製コンクリート杭工法に関しては、それぞれの資格制度がありましたが、平成27年度からそれらの資格を統合し、平成28年からは国交省の告示に基づく基礎施工士資格制度が開始されました。制度発足後、すでに7年が経過し、今年度は155名が試験に合格し、資格保有者の合計は3930名となりました。さらに、現在の基礎施工士資格制度に、鋼管杭工法に関する資格制度を統合する方向で関係団体が協議を進めており、今年はその協議を加速させ、基礎ぐい工事全般にわたる専門資格の創設を目指したいと考えています。これにより、杭基礎全般の施工品質、安全性及び信頼性のさらなる向上に繋がるものと期待しているところです。

当協会を含む基礎工事関連四団体は、建設業法に基づく許可業種区分について「基礎ぐい工事業」を「とび・土工工事業」から独立させることを国土交通省に対し要望してきていますが、基礎ぐい工事の健全な発展に向けた業界の取り組みも踏まえ、今後ともその実現に向け粘り強く要望してまいります。

働き方改革の推進については、本年4月から建設業にも適用される罰則付き時間外労働の上限規制に適切に対応していかなければなりません。

もとより、日本の建設業を守りその魅力を発信し有能な人材を確保するために、建設業全体として、長時間労働の是正、適正工期の設定等に取り組む必要があります。当協会も、日本建設業連合会等と連携しながら作業所の週2日閉所(48休)実現を推進してきたところですが、この問題は社会全体のご理解をいただかなければならない問題であり、関係団体と連携しながら当協会も引き続き積極的に取り組んでまいりたいと考えています。

また、働き方改革を推進する上でも、施工管理のICT化、デジタル化を推進していくことが必要です。杭基礎工事にICTを活用して施工管理データを一元管理することにより、検査の実施から報告に係る業務を大幅に効率化し、現場管理者の負担を軽減することが可能となることから、会員会社への普及に努めてまいりたいと思います。

コンクリートパイルの信頼性の向上については、大地震時におけるコンクリートパイルの挙動に関する基礎的なデータを収集し、コンクリートパイルの改良に向けた検討を行うための研究を進めてまいります。

また、建築学会の建築基礎構造設計指針の改訂に伴い、既製コンクリート杭の基礎構造設計マニュアルの内容を見直し、大地震を想定したモデルの計算例を掲載する改訂作業を進めてまいります。

今後とも、杭基礎構造の設計・施工に関する基準類の改訂や標準化等に係る実験、調査研究を継続し、大学及び国の研究機関との共同研究や関係団体等との技術交流を推進するとともに、調査研究成果や技術情報の提供・普及等の事業活動を展開してまいります。

コンクリートパイル・ポールの製品に関しては、各地区を基盤とした需要拡大の活動状況を収集し、機関誌等による広報活動等を中心とした普及啓発事業を積極的に進めてまいります。需要動向につきましても、正確な情報を迅速に収集するとともに統計調査と分析の結果を広く提供させていただきます。このほか、標準化等の品質に関してはJISや団体の規格類の作成及び技術開発の調査研究につきましても鋭意進めてまいります。

当協会におきましては、現下の厳しい諸情勢を踏まえつつ、各々の課題に積極的に取り組んでまいる所存でありますので、関係官庁及び関係機関の皆様方のなお一層のご指導とご理解を御願い申し上げます。

最後に皆様方のご健勝とご多幸を祈念いたしまして、年頭のご挨拶といたします。

                                    以 上

一般社団法人コンクリートパイル・ポール協会

会長 黒瀬 晃
(ジャパンパイル株式会社)