新年を迎え、謹んで年頭のご挨拶を申し上げます。

当協会は、令和元年の合併新設以来7年目を迎えます。コンクリートパイル・ポールのメーカーおよび施工会社の団体として、従来にも増して、製品の品質向上と開発・普及および設計・施工技術の向上・普及に、業界の力を結集して取り組んでまいりますので、本年も皆様のご理解、ご協力を賜りますようお願い申し上げます。

さて、日本経済の先行きについては、雇用・所得環境が改善する下で、各種政策の効果もあって、緩やかな回復が続くことが期待されていますが、海外景気の下振れが我が国の景気を下押しするリスクとなっています。また、物価上昇、アメリカの今後の政策動向、中東地域をめぐる情勢、金融資本市場の変動等の影響に十分注意する必要があります。

 コンクリートパイルの出荷状況をみますと、令和6年度上期(4—9月)の実績は、98万2千トンと前年同期に比べ6.4%の減少となりました。パイル需要を牽引する民間需要が振るわず、民需の主力部門である半導体など「工場」は堅調だったものの、「流通施設・倉庫」は2割強の減少、「住宅」も2割弱の減少になり民需全体を押し下げました。一方官需は、土木系が伸びて前年並みに推移しています。地区別でみると、「北信越」など4地区が増加しましたが、需要地である「関東」など5地区で落ち込んでいます。建設資材の価格高騰、働き方改革による人材確保難などの影響の中で、受注の絞り込みの動きも継続されるなど、今後とも先行きの不透明感は否めませんが、本年の出荷状況が少しでも改善に向かうよう期待しているところです。

このような中、当業界における目下の重要課題は、第一にコンクリートパイルの信頼性の向上、第二に働き方改革の推進、第三に基礎ぐい工事業の社会的位置づけの明確化と専門性の確立、第四にコンクリートパイル・ポール製品の需要拡大と標準化の推進および品質の向上だと考えております。

当協会は、これらの課題への対応を中心として、本年も以下のような事業活動を着実に進めることとしています。

昨年初頭、我が国は大きな地震災害に襲われました。大雨災害が重なり、能登地域では今なお不自由な生活を強いられている多くの方々がいらっしゃいます。心からお見舞い申し上げます。

当協会の会員が製造、施工に携わっているコンクリートパイルは、地震に対する構造物の安全性に大きくかかわっていることは言うまでもありません。当協会では、本年も大地震時におけるコンクリートパイルの挙動に関するデータ解析を行うなど、コンクリートパイルの信頼性向上に向けた研究を進めてまいります。

また、建築学会の建築基礎構造設計指針の改訂に伴い、昨年、既製コンクリート杭の基礎構造設計マニュアルの見直し作業を行いました。本年は、大地震を想定したモデルの計算例を掲載するなどの改訂を行ったマニュアルを、本協会の会員のみならず一般にも公開しその普及に努めてまいります。

今後とも、コンクリートパイルの信頼性のさらなる向上を図るため、杭基礎構造の設計・施工に関する基準類の改訂や標準化等に係る調査研究を継続し、大学および国の研究機関との共同研究や関係団体等との技術交流を推進するとともに、調査研究成果や技術情報の提供・普及等を行ってまいります。

我が国の多くの産業が人材不足に苦しむ中、基礎ぐい工事業も人材確保が大きな課題となっています。

日本の建設業を守りその魅力を発信し有能な人材を確保するためには、建設業全体として、適正工期を確保し、長時間労働の是正、作業所の週2日閉所(48休)実現等に取り組む必要がありますが、当協会も、日本建設業連合会等関係団体と連携しつつ働き方改革に積極的に取り組んでまいります。また、昨年4月から建設業にも適用された時間外労働の上限規制に適切に対応するためにも、施工管理のICT化、デジタル化を推進していくことが必要であり、ICT等の活用について会員会社への普及に努めてまいります。

さらに、基礎ぐい工事に携わる人々に誇りをもって就職し仕事に取り組んでもらうためにも、「基礎ぐい工事業」を社会的にしっかりと位置付けていただき、業界の果たしている役割、意義等を世の中に発信していく必要があると考えています。

基礎ぐい工事業界は、現状でも特殊な機械・機材、独自の技術・ノウハウ等を有していますが、専門技術は高度化するとともに体系化が進んでいます。こうした実態を踏まえ、当協会を含む基礎工事関連四団体は、建設業法に基づく許可業種区分について「基礎ぐい工事業」を「とび・土工工事業」から独立させることを国土交通省に対し継続して要望しており、今後ともその実現に向け粘り強く活動してまいります。

従来、場所打ちコンクリート杭工法と既製コンクリート杭工法に関しては、それぞれの資格制度がありましたが、それらの資格を統合し平成28年から国交省の制度に基づく基礎施工士資格制度として運営してまいりました。今年度は193名が試験に合格し、資格保有者の合計は4072名となっています。現在、基礎施工士資格制度に、鋼管杭工法に関する資格制度を統合する方向で関係団体が協議を進めており、本年はその協議を加速させ、基礎ぐい工事全般にわたる専門資格の創設を目指したいと考えています。これにより、基礎ぐい工事に携わる技術者の資格取得に対するモチベーションが高まるとともに、杭基礎全般の施工品質、安全性および信頼性のさらなる向上に繋がるものと期待しているところです。

コンクリートパイル・ポールの製品に関しては、当協会の支部において地域の需要拡大に向けた活動を行うとともに、需要動向に関する正確な情報を迅速に収集し、調査と分析の結果を広く提供させていただきます。コンクリートポールについては、コンクリート製品のJIS改正に向けた検討や電力ポール、分割ポール等の規格に関する動きにも適切に対応するなど、標準化や品質向上に資するJISや団体の規格類の作成および技術開発に取り組んでまいります。このほか、機関誌等による広報活動を中心とした普及啓発事業を積極的に進めてまいります。

当協会におきましては、現下の厳しい諸情勢を踏まえつつ、各々の課題に積極的に取り組んでまいる所存ですので、関係官庁および関係機関の皆様方のなお一層のご指導とご理解をお願い申し上げます。

最後に皆様方のご健勝とご多幸を祈念いたしまして、年頭のご挨拶といたします。

                                    以 上

一般社団法人コンクリートパイル・ポール協会

会長 塚本 博
(日本コンクリート工業株式会社)